ユードラ・クルックの看取り
熱気冷めやらぬ王立闘技場を後にして、神官トーアは魔銃師会へ向かった。
魔銃導師ユードラ・クルックを看取るためである。
ユードラは危篤のため、バグウェル戦を観戦することができなかった。
夕2刻に到着すると、ユードラは友人に取り囲まれていた。危篤者がこのように多くの友人に囲まれていることを目にすることは実は少ない。
ユードラが手に持っているガロニの種は遺跡で出たものだろうか。
「良く出来た性格」のユードラさん。
夫のレジナルド・クルックも魔銃師であり、昨年は夫婦揃って魔銃導師選挙の候補者だった。
夫婦ともに今年エルネア杯初参戦であったようだ。
夫婦はまた、ともに220年生まれの同窓生でもある。
二人で少しずつお互いを高めあい、ついにこの高みに至ったのかもしれない。
初期国民セルジュ・クルックは郊外の家に一人暮らしをしている、親戚のいない「自由気まま」な青年だった。セルジュに「享楽的」な国民のブリアナ・アンダーソンが嫁ぐことからクルック家の歴史は始まった。(このブリアナの父母ともに農場の達人称号を持ち、母に至っては剣士・優等生の称号やカーネイの瞳を持っている。そしてアンダーソン家はなぜか旧市街の家に住んでいる。興味深い初期国民家族といえよう。)
クルック姓はこの家族にしか残っていない。
ユードラの長女サンドラは結婚後もクルック姓を名乗っている。次女カーラは未婚。