チレーナ・ボヌーの看取り
夏も盛りのエルネア王国。
神官トーアは日課のラゴ釣りを切り上げると、涼しい森を出て、真夏の太陽に灼かれたレンガ敷の噴水通りを南へ歩いた。
トーアが部屋に到着した時、危篤であるチレーナ・ボヌーはベッドに体を横たえていた。
「誠実なタイプ」の優等生であるチレーナ。
勤勉な性格にもかかわらず、特殊職につくことは生涯なかった。
チレーナは独居者である。
妻のアントワーヌは長く農場につとめていたが、241年の1日にトーアが看取った。
武器はマシンズピスタだが、まだ拾って日が浅そうである。
ボヌー姓は妻のもので、チレーナ自身は下山マーウィン家出身。
長女カルロッタはガリカ姓を、長男ジャスパーはボヌー姓を名乗っている。
カルロッタは若くして農場代表も務める女性で、チレーヌの誠実さと優等生な気質を受け継いでいるだろう。
今年の1日、妻アントワーヌの命日に、チレーヌは川辺の岩に腰掛けてエルネア川を眺めていた。