ニエヴェス・ネビルの看取り
危篤のニエヴェス・ネビルの家を訪れた。黒いウェリントングラスをかけたニエヴェスは穏やかな顔で、「ラムレイ君」と私を呼んだ。
ニエヴェスは青い国民服に身を包み、体をベッドに横たえながら、娘時代に奏女としてアトリウムの花を摘んだこと、功労者として表彰されたことなどを朗らかに話してくれた。家系図を見せてもらって気づいたのだが、ニエヴェスの母のラケールも緑髪で伝統衣装がよく似合う女性だった。ラケールはたしか農場代表にまでなったかと思う。ラケールが妖しい色香をまとう女性だったので、きりっとした顔立ちのニエヴェスの母だとは思っていなかった。そういえばニエヴェスの2人の娘、レジーナとカタリーナも緑の髪を持ち、農場で働いている。三代に渡ってネビルの家は緑髪の働き者の女性を輩出しているわけだ。
ネビル姓は母方のラケールのものだ。我がミリー国では、ネビル姓は全て初期国民のグウィード・ネビルに連なっている。ラケールの父がグウィードの息子で、ラケールはグウィードの孫、ニエヴェスはグウィードのひ孫にあたる。
家系図を遡って知ったのだが、グウィード・ネビルにはダドリーという兄がいるのだ。初期国民の名簿でネビル姓は、グウィードとその両親だけだったので全く気づかなかった。グウィードの兄のダドリーは既婚男性であるのにネビルを名乗っていない。エニュレを名乗っている。エニュレは断絶家名である。ダドリーの妻のマリナ・エニュレ(ミリー国初期国民に2人いるメガネのうちの1人)の両親は名簿に載っておらず、192年時点で他界しているか、マリナが帰化旅人かどちらかだろう。それにしても既婚済みの初期国民が山岳でも王族でもないのに妻の姓を名乗っているとは。私がエルネアを始めた当時は、NPCは夫の姓を名乗る仕様であったので、ダドリー・エニュレとマリナ・エニュレ夫妻には何か事情があったのかもしれない。エニュレ家には初期国民として赤子ルビー・エニュレがいたが妹が1人できたのみでエニュレ家は断絶した。
ラケールの母はコーツ家出身だった。ミリー国初期龍騎士イスラエル・コーツのコーツ家だ。イスラエルの1人息子イジドアは3人の子をもうけたが、3人とも女児だったため、コーツ家はイスラエルの孫の代で断絶した。
ニエヴェスの父のリュシアンはボヌー家の出身だ。リュシアンの父のミゲルに、3代目PCハンナの妹ミュリエルが嫁いでいる。ボヌーといえば、初期国民フィン・ボヌー、ウルリケ・ボヌー夫妻だ。ニエヴェスは、初期ボヌー夫妻の子供のひ孫にあたる。
さて、ダドリー・エニュレのことがあったので確認したのだが、なんとこの初期ボヌー夫妻も妻ウルリケの実家がボヌーなのだ。夫のフィンはロナーティ家出身で、アルフレッド・ロナーティの兄なのだという。
ちなみにアルフレッドとフィンの姉アンジェリン・ロナーティは、我がミリー国では、初期奏子キリアン・ル・アンリに嫁いでいる。キリアンが高齢のためか、ル・アンリ夫婦は子をなさず、ル・アンリ家は断絶した。
またウルリケ・ボヌー夫妻には男児が2人でき、長男フランツ次男グレーブというのだが、現在のボヌー姓は全て次男グレーブに連なっている。グレーブがミゲルの父でありニエヴェスの高祖父なのだ。長男フランツは、初期国民テリー・セリアーを妻に迎えたがテリーが高齢だったためか子をなさなかった。テリーの結婚によってセリアー家は断絶した。
ニエヴェス・ネビルの家系図は非常に興味深かった。エニュレ家、ボヌー家の婿とり。エニュレ、コーツ、ル・アンリ、セリアーの断絶時期。ネビル家の祖グウィード、ボヌー家の祖グレーブの特定。さまざまな収穫があった。
日は落ち、ニエヴェス・ネビルは穏やかな表情でガノスに召された。
ニエヴェスの長女レジーナはカラスコ姓を名乗っている。次女カタリーナは未婚。