レジナルド・クルックの看取り
麦播きの日の夕刻。慌ただしい農場通りを後にして、神官トーアは噴水通りB区に向かった。
今日は魔銃兵レジナルド・クルックを看取る。
よほど体が辛いのか、横になって動かないレジナルド。
しかし機嫌はいいようで音符は飛ばしまくる。
柔らかいほほえみのスマートな印象に反して「頑固一徹」なレジナルドさん。
エルネア杯出場経験もあるらしい。
ココロ特化のステータス。銃そして遺跡、そして妻に一筋に生きたのだろう。
レジナルドの亡き妻ユードラは魔銃導師だった。
初期国民で近衛騎士のジーナ・ヒルシュの孫の孫にあたるヒルシュ家出身のユードラは、武人の才を遺憾無く発揮した人生を送った。
恋人や伴侶の後を追いかけて同じダンジョンを探索するNPCの行動が、これまで王国に何組もの魔銃夫婦を生み出してきた。
ユードラとレジナルドのステータスを比べるとやはりユードラの方が進んでいたので、ユードラを追いかけているうちに、こうなっていたという感じだろう。
それにしても、伴侶が魔銃導師在任中に伴侶が死亡した場合は、家族は噴水通りに引っ越すのか。旧市街にNPCが住む条件が厳しすぎる。
魔銃導師ユードラでもなし得なかった武器カンストをレジナルドは達成している。
2人の娘はよく似ていてまるで双子のよう。
長女サンドラはクルック姓を継いでいる。
サンドラ自身は魔銃兵ではないけれど、魔銃の名門ソラル家から婿を取った。
次女カーラは剣の名門コルベール家に嫁いだ。
多少どうでもいいのだが、レジナルドの父はアポリナル、祖父はプロスペルという。三代続いて五文字縛りだ。子供2人は娘ということもあって、サンドラ、カーラ、と、どこかユードラに似た名付けをしている。偶然とはいえ名前に規則性を見出せるこの瞬間のクルック家は、まるで現実の一族のようだ。
生命の輝きを自分の決めた相手に捧げた見事な一生。
葬儀参列者にそっくりさんがいてびっくりした。彼は誰?